新しい流行りの入浴施設も良いけど、何か物足りないなぁ。
歴史を感じられて、本当の非日常感を味わえる所に行きたい。

 私自身も、現代的な入浴施設に行きますが、最近、行き飽きてしまった感が否めず、
もっと「ディープ」な世界を感じられる場所に行ってみたいと思うようになりました。
 
 また、私はリゾートホテルでの勤務経験があり、源泉の管理を担当したことがあります。
 裏側を知っているだけに、本物の温泉つまり「100%源泉掛け流し」の施設にこだわっています。
 
 そんな背景を持つ私が、「本物の温泉」を味わえる施設をご紹介します。

大正期から続く温泉療養所

 箱根山最高峰の「神山」の北西斜面、標高885mに位置する「姥子温泉」場の温泉療養所、「秀明館」さんです。
「姥子温泉」については、夏目漱石の『吾輩は猫である』で登場人物の思い出話で語られています。
 
 まずこちらは「日帰り入浴施設」ではなく、静養したり、温泉に入り療養する方がいる「温泉療養所」なのだという認識を持つ必要があります。
 
 施設の中には、静かに過ごしたい方の迷惑にならないよういくつかルールがありますので、行かれた際には必ず確認をお願いします。

 また、受け付けの方によると、メディアの取材は一切お断りしているとのことで、施設内の私的な撮影もNGです。
 
 大正レトロの名残が随所に見られる建物で、つい写真を撮りたくなりますが、OKなのは外観のみとのことです。
 
ただ、SNS等にアップするのはNGでしたので、この記事には画像はありません。

日本の原風景「湯床」で静養
 

 私が訪れた時は、2時間個室部屋付きを頼みました(2,000円)
 6畳程の和室で、お茶セットが備え付けられ、テレビやエアコンはありません。
 あくまで静かに、自然の空気で過ごすのがコンセプトです。
 また、標高が高い所にある為、箱根の下のほうと比べて気温が低くなります。
 だから冷房はなくても過ごせるということなのでしょうか。

 部屋の中もそうですが、建物の内装の所々は現代的なリノベーションがなされており、奇麗になっています。

 窓の外には広めの縁側があり、目の前には湯屋から流れるお湯が、田園の小川のように流れて良い風情となっています。
 その為、この個室部屋は「湯床」と呼ぶそうです。

岩盤から自然湧出する神の泉

 さて、脱衣場に行くと、大浴場の扉は開放されているのですが、まず目の前の光景に圧倒されます。
 
 正面にごつごつとした岩の塊が突き出ていて、下半分は湯に浸かって洞窟のように窪み、それが大浴場の壁の一部になっているのです。
 
 しかも、岩の塊の前にはしめ縄が飾られています。
 岩の下側の窪みを見ると、お湯が湧き出ているのが分かるのですが、まさに温泉という恵を与えてくださる「神域」ということなのでしょう。
 その「神域」は、お湯に触れられるものの、簡単に入れないよう仕切られています。 

 天井は7~8m程あり、吹き抜けになっていて自然換気されています。
 真ん中には「昭和な」電球がぶら下がっていますが、昼間は点けていないようで、採光はしているものの、薄暗くて「ジブリ」感があります。
 浴槽は2m×3.5m程の広さで真ん中位で仕切られており、石でできています。
 
 こちらの大浴場では、石鹸やシャンプーが使用できないルールとなっており、桶で体を流すぐらいですが、浴槽のお湯は澄んでいました。
 
 湧き出ているお湯自体が澄んでいるのと、給湯口からの湯量が多い為、常時浴槽からオーバーフローしており、浴槽水の入れ替わりが早く、お湯が奇麗なのでしょう。

「姥子温泉」は、あの「金太郎」さんが目を負傷した際、温泉で療養したところ、治ったという伝説で有名です。

 実際に、浴槽にいた方が奥の「神域」の泉で顔をつけていたのには驚きました。
 

 とにかく実際に行って頂いて、大浴場のこの荘厳な光景を体感して頂けたらと思います。

くれぐれもお静かにご静養くださいませ。

「秀明館」さんの公式サイトです。