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「新しい流行りの入浴施設も良いけど、何か物足りないなぁ」
「歴史を感じられて、本当の非日常感を味わえる所に行きたい」
私自身も、現代的な入浴施設に行きますが、最近、行き飽きてしまった感があり、もっと「ディープ」な世界を感じられる場所に行ってみたいと思うようになりました。
非日常的な場所で、静かに休息しませんか?
私はリゾートホテルでの勤務経験があり、源泉の管理を担当したことがあります。
裏側を知っているだけに、純粋な温泉つまり「源泉100%掛け流し」の施設にこだわっています。
そんな背景を持つ私が、非日常的で「本物の温泉」を味わえる施設をご紹介します。
大正期から続く温泉療養所
箱根山最高峰の「神山」の北西斜面、標高885mに位置する「姥子温泉」場の温泉療養所、「秀明館」さんです。

箱根の玄関口「箱根湯本」から見た場合、アクセスが良い立地とは言えません。
「箱根湯本駅」から車やバスだと、約45分かかります。
さらに、周囲には、店や飲食店もありません。
「姥子温泉」については、夏目漱石の『吾輩は猫である』で登場人物の思い出話に出てきますが、「どうもこうも仕様のない不便の所」と語られています。
「不便なところ」ですが、本物の温泉を求めて来る人は絶えないのです。
「日帰り入浴施設」ではなく、静養したり、温泉に入り療養する方がいる「温泉療養所」なのだという認識を持つ必要があります。
医学が現在ほど発達していなかった20世紀初頭では、病気の治療のため、温泉が活用されていました。
当時、秀明館さんにも、眼科から紹介されて訪れた患者がいて、10日間の滞在で全快した、との報告が残っています。
私が訪れた時も、糖尿病による目の疾患を持つ方が、来られていました。
泉質は「単純泉」ですが、鎮静効果がある「硫酸カルシウム」、目に効くとされる「硫酸アルミニウム」が含まれています。
「姥子温泉」は、足柄山の「金太郎」が目を負傷した際、温泉で療養し、治ったという伝説でも有名です。
また、「姥子」は「箱根神社」の領地で、その関係からか秀明館さんの庭園に、「箱根神社」と彫られた小さい祠があります。

祠の中にご神体の水晶が見えました。
訪れたら、参拝するのも良いでしょう。
施設の中には、静かに過ごしたい方の迷惑にならないよういくつかルールがありますので、行かれた際には必ず確認をお願いします。
また、メディアの取材は一切お断りしているとのことで、施設内の私的な撮影もNGです。
大正レトロの名残が随所に見られる建物で、つい写真を撮りたくなりますが、OKなのは外観のみとのことです。
日本の原風景「湯床」で静養
私が訪れた時は、2時間個室部屋付きを頼みました(2,000円)
6畳程の和室で、お茶セットが備え付けられ、テレビやエアコンはありません。
あくまで静かに、自然の空気で過ごすのがコンセプトです。
また、標高が高い所にある為、箱根の下のほうと比べて気温が低くなります。
だから冷房はなくても過ごせるということなのでしょう。
5月の終わりで、ロングTシャツでしたが、肌寒かったです。
部屋の中や、建物の内装の所々は現代的なリノベーションがなされており、奇麗になっています。
窓の外には広めの縁側があり、目の前には湯屋から流れるお湯が、田園の小川のように流れて良い風情となっています。
その為、この個室部屋は「湯床」と呼びます。

※画像はイメージ
岩盤から自然湧出する神の泉
さて、脱衣場に行くと、大浴場の扉は開放されており、まず目の前の光景に圧倒されます。
正面にごつごつとした岩の塊が突き出ていて、下半分は湯に浸かって洞窟のように窪み、それが大浴場の壁の一部になっているのです。
目の前で湧き出る自然湧出泉なのです。
しかも、岩の塊の前にはしめ縄が飾られています。
岩の下側の窪みを見ると、お湯が湧き出ているのが分かり、まさに温泉という恵を与えてくださる「神域」ということなのでしょう。
真ん中には「昭和な」電球がぶら下がっていますが、昼間は点けていないようで、薄暗くて「ジブリ」の世界感のようでした。
画像でお伝えできないので、とにかく実際に見に行ってみてください。
注意していただきたいのが、自然湧出のお湯に入れるのは、年3回(春雨、梅雨、秋雨)の時期だけだということです。
温泉は元々ほとんどの場合、雨水からなります。
雨水が地下に浸透し、マグマに熱せられて様々な鉱物やミネラルを取り込みながら、地表に出てきます。
秀明館さんは、神奈川では、温泉の鮮度はNo.1でしょう。
浸透する雨水がなければ、温泉は湧き出てきません。
自然湧出がない時期は、井戸から動力で揚げる源泉を予備として使用しています。
泉質自体は同じなのですが、鮮度とお湯の感触の良さは自然湧出にはかないません。
自然湧出した時は、公式サイトの「お知らせ」で教えてくれますよ。
秀明館さんでの入浴作法(私流)
大浴場では、石鹸やシャンプーが使用できないルールとなっています。
何回もかけ湯をして、タオルがあれば汚い部分をこすり、体の汚れを流していきましょう。
本物の温泉は、殺菌力があるので、シャンプー類は必要ないと言われています。
鮮度が良い温泉が、絶えず流れて湯量も多い為、常時浴槽からオーバーフローしており、浴槽水の入れ替わりが早く、お湯が奇麗なのです。
湯温は42℃位なので、のぼせないよう5分程浸かり、浴槽を出ます。
脇で休憩し、一旦体を冷ますのですが、夏場は汗が出るので、水を頭からかぶります。
そして、体が完全に冷え切る前に、また浴槽に浸かるのです。
大抵の方は、7~8分程1回浸かり、上がってしまうのですが、いつも、もったいないなぁ、と思ってしまいます。
私は、50分程風呂場にいて、上記を繰り返しています。
上がる時は、浴槽のお湯を頭から何杯もかけて、風呂場を出ます。
pH3近い「酸性」のお湯なので、「レジオネラ菌」も寄せ付けないとのことですよ。
とにかく実際に行って頂いて、大浴場のこの荘厳な光景と、自然本来の温泉を体感して頂けたらと思います。
施設情報
秀明館
| 住所 | 〒 250-0522 神奈川県足柄下郡箱根町元箱根110-1 |
| 電話 | 0460-84-0026 |
| 入館受付時間 | 【湯床】10時~14時受付終了 【入湯のみ】15時~16時受付終了 【閉館】通年17時 |
| 休館日 | ・毎週木曜日 ・冬季休業期間につき毎年2月いっぱいは休み ・水道凍結などの設備トラブルにより臨時休業する場合あり ※臨時の休業の際は<お知らせ>にて確認 |
| 駐車場 | 有り |
詳細は「秀明館」さんの公式サイトでご確認ください。
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